腸炎ビブリオとは?

【管理栄養士向け】腸炎ビブリオ食中毒 要点解説

腸炎ビブリオ食中毒

腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)は、夏期に発生する食中毒の主要な原因菌の一つです。好塩性細菌であり、沿岸の海水や海産魚介類に広く分布しています。特に、沖縄のような美しい海に囲まれた地域では、新鮮な魚介類を扱う機会が多いため、正しい知識に基づいた衛生管理が極めて重要となります。本ページでは、管理栄養士として知っておくべき腸炎ビブリオの要点を、疫学データや具体的な対策と共に解説します。

菌学的特徴

形態と性質

  • グラム陰性桿菌、通性嫌気性
  • 運動性あり(一本の極鞭毛)
  • 好塩性(至適食塩濃度 2〜3%)

増殖条件

  • 至適発育温度: 35〜37℃
  • 世代時間: 約10分(至適条件下)
  • 真水(水道水)中では生存できない

ポイント: 増殖速度が非常に速いことが特徴です。室温(25℃)に1時間放置するだけで菌数は数十倍から百倍以上に増加する可能性があるため、徹底した温度管理が求められます。

疫学

腸炎ビブリオによる食中毒は、夏期(6月〜9月)に集中して発生します。これは、海水温が20℃を超える時期に本菌が海水中で活発に増殖するためです。原因食品は刺身、寿司などの生鮮魚介類が圧倒的に多く、次いで加工品や二次汚染された食品が続きます。

腸炎ビブリオ食中毒 月別報告件数(仮想データ)

臨床症状

  • 潜伏期間

    通常8〜24時間(最短2〜3時間)。

  • 主症状

    激しい腹痛(上腹部)、水様性下痢が主。腹痛は差し込むような疝痛を呈することが多い。

  • 随伴症状

    嘔吐、発熱(37〜38℃程度)、頭痛、悪寒などを伴うことがある。

  • 経過

    通常は2〜3日で回復する。予後は良好だが、高齢者や基礎疾患を持つ者は重症化し、脱水症状に注意が必要。

予防と対策:食中毒予防三原則の徹底

腸炎ビブリオは熱に弱く、低温では増殖が抑制され、真水にも弱いという性質を持っています。これらの弱点を突いた「つけない」「ふやさない」「やっつける」の三原則の遵守が、予防の基本となります。

つけない (洗浄・殺菌)

  • 魚介類は調理前に水道水(真水)で十分に洗浄する。
  • 調理器具(包丁、まな板等)は魚介類用とその他で使い分ける。
  • 使用後の調理器具は速やかに洗浄・殺菌する。
  • 調理前後の手指洗浄を徹底する。

ふやさない (低温管理)

  • 魚介類は購入後、速やかに冷蔵庫(4℃以下)で保管する。
  • 室温での長時間放置は絶対に行わない。
  • 解凍は冷蔵庫内または流水で行う。

やっつける (加熱処理)

  • 加熱調理が最も効果的な殺菌方法である。
  • 中心部温度が75℃で1分以上(または65℃で数分)の加熱で死滅する。
  • 生食を避けることが、特にハイリスク者(高齢者、小児等)には推奨される。

 

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